【教えて!ターさん】糸の製造プロセスとエコ素材について

  • 教えてターさん!

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今回の「教えて!ターさん」は、糸の製造プロセスとエコ素材について。

糸を作る時には、「撚り」を入れます。その撚りを入れて糸を作っていくプロセスにも種類があるようです。

また、話は盛り上がり、ターさんが携わる直近の糸開発の苦労話にまで!

ぜひ、ご覧ください。

※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

佐野
佐野

さて、今日も始まりました「教えて!ターさん」。
彩月さん、最近は何か気になることはありましたか?

岡崎彩月
岡崎彩月

最近は小林さん(※社内一の“長繊維”博士)といると、よくわからないワードが出てきて。「精紡交撚糸」とか「トライスピン」、「無撚」とかっていうワードはよく聞くんですけど、撚糸関連の話はよくわからないかもしれないですね。

佐野
佐野

小林くん、「無撚」とか、嬉しそうにしゃべるんでしょうね。「綺麗だな。撚り入れずにこんなことできるんですね」って。容易に想像できますね(笑)。
工場さんって見に行ったことありますか?見て一発で分かるかって言ったら分かんないんですけど、糸をどうやって作るかの話なんですよね。

佐野
佐野

長繊維とかも別とは言い切れないんですけど、分かりやすいのはウールで、元をたどると羊じゃないですか。羊の毛を刈らしてもらって、そしたら毛の塊が出来ますよね。そいつをちょっと慣らして、もっと綿(ワタ)っぽくするんですよ。
極端に言うと、それに撚りを入れたら糸になる。じゃあどこで糸にしますかが、紡績工場なのか撚糸工場なのか、どういう機械を使ってるのかみたいな感じなんですけど、今上がってたトライスピンとか、精紡交撚とか、無撚っていうのもそうなんですけど、全部糸を作る機械の名前です。

簡単に言うと、紡績っていうのは、綿(ワタ)から糸にする。撚糸屋さんっていうのは、出来上がった糸を加工する。意匠糸を作ったり、単純に双糸にしたりとか。うちの中で、色々とお付き合いのあるカワボウ繊維さんや小金毛織さん東和毛織さんだとかっていうのは、紡績屋さん。綿(ワタ)から糸にしている会社。滝善さんや堀田さん、安藤撚糸さんや桜方繊維さんとか、そういうところが撚糸屋さん。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

糸作りの話って、現場も見てほしいですし、いろんな人からいろんな話を聞いてほしいですし。いつも同じことになっちゃうんですけど、何回も勉強するべきことなんで、いろんな角度からしっくりくるまで、話を聞くのはありだと思います。

佐野
佐野

綿(ワタ)に撚りを入れると、なんとなくストレートの糸ができる気がしません?綿(ワタ)のままねじっていく。そうすると逆に言うと、ストレートの糸しかできなくなさそうじゃないですか。それは本当にその通りで、簡単に総合紡績みたいな作り方とはちょっと違う。どっちも綿に撚りを入れる機械なんですよ。それを糸を作る、紡績をするという言い方をしているんですけど、それでやるとストレートの糸だけができる状態。でも僕らが使っているのってパンシーアームという形状が付いているんですよ。

佐野
佐野

形状をつけるための機械が別にあるんですよ。それを撚糸で行うのが、一般的に多いんですけど、紡績のよりを入れながら形状をつけれるという特殊機械があるんですよ。ループにして、そのループを固定するための内容を、紡績をしながら一緒に撚糸できる機械があって、それが「精紡交撚糸」。横文字でいうと「トライスピン」というんですよ。

モヘアタムってあるじゃない、うちでいうヴィクトリアだとかマリアだとか。トライスピンという機械が出るまでは、ストレートの糸を紡績屋さんが作って、撚糸工場でループにして、それをループをひっかいて切って、タムタムヤーンにしてたんだけども。今そのトライスピンという機械は、紡織しながらループまでできちゃう。今まで分業だった、撚糸工場さんがループにしてたものをそこまでできるようになったんだね。

ターさん
ターさん

そうすると、あとは起毛機でそのループをひっかいてあげれば、タムタムヤーンになる。例えば、うちのアトンなんかはトライスピンでそのままループまで作っているんだ。その方が柔らかい糸ができるからね。糸を作ってから撚糸するとどうしても硬い糸になっちゃう。だから、トライスピンって画期的な機械なんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

画期的ですけど、歴史上はどれくらい前なんですか?30年経ちます?

出始めたころかなあ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

あ、そうなんですね。へぇー。すでに歴史のある機械だなっていう印象がありましたけど、30年は経ってなかったんですね。

佐野
佐野

糸の用語を知っても、物と一致しないと、理解はできないと思います。ある意味、時間が解決することでもあると思うんで。

佐野
佐野

あとは、例えばマリアリリー。リリヤーンって元糸があって、リリヤーン機っていって編み針が付いてる縫い機で加工して輪っか状の糸にしていくんですよ。マリアをリリヤーンにした時ってもともと15.6番ってそれなりに太めな糸で、上がりが2.6番っていうもっと太い糸ができるじゃないですか。

佐野
佐野

あのレベルのリリヤーンを1キロ作るのにどれくらい時間かかると思います?

岡崎彩月
岡崎彩月

えー、めっちゃ時間かかりそうですね。やっぱり1日くらいかかりますか?

佐野
佐野

そう、丸1日かかるんですよ。で、それがもちろん、1台で1㎏作るだけじゃなくて、それが何十台もある機械を一気にかけるから1日で何十キロっていうのは一応できるんですけど。本当に一本だけで考えると、現場見るとすっごいゆっくりなんですよ。
編み針の動きだけは速いんですけど、巻き上がっていくスピードがゆっくり、ゆっくりなんですよ。それで1キロ出来上がるから、納期急いで!みたいなことを言っても、物理的に丸1日本当にかかる。あの太さのものでそれなんですよ。

佐野
佐野

でも扱っているのって、50番とか40番とか、すごい細いものを使ったりするじゃないですか。そうなるとリリヤーンじゃなくて、普通の撚糸でもカバーリングとか、ああいうやつでも4日ぐらいかかるんですよね。

75デニールを双糸なんていったら、撚糸だけで2日ぐらいかかるんですよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。

機械を回しっぱなしでも、36時間から48時間ぐらいかかるんですよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

撚糸が一番、各工程それなりに時間もかかるので、もちろん待ってる時間っていうのもあるんですけど、実動時間も本当にかかる。実際の時間はそれなりに2日~4日って平気でかかるので。月曜日に糸を送って、火曜日着で行くんで今週末に何とか出してくださいっていうのが絶対無理な糸もあるんですよね。

佐野
佐野

多分機械見て一番わかりやすい、びっくりするところですかね。こんなに時間がかかるの?!って。

回ってるのはすごく早いんだけどね。巻き上げてるのが遅いんでゆっくりと回っている感じだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ワインダーで本数取りしたいときに、糸のコーンを分けるんですけど、500gに分ける作業だけでも結構時間がかかるんですよ。

岡崎彩月
岡崎彩月

そうなんですね!

大きい工場の機械が何錐分だろうね。一つの機械だけで、60錐分。1個1個の単位を錐というんだけれども。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ワインダーが横に60個並んでいるのを、1台とする、みたいな感じなんですよ。ちっちゃいやつは、6錐とか12錐とか。

佐野
佐野

60錐あるってことは、単純にミニマム60キロみたいな。 60錐の機械が4台あるとしたら、一日で作れる糸は一回に240キロみたいなことになるんですよ。

岡崎彩月
岡崎彩月

中国はそういう錐が多い機械の台数が多いってことですか?

佐野
佐野

多いですよ。

一回に少なくてもいいと、弾くのに300Kgくらいとかで弾くから、レギュラー綿だったら何トンって弾いちゃうわけだから。すごい勢いだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ターさん、糸チームとして糸を開発されてるじゃないですか。無事26年SSの糸が落ち着くと思います。(※収録当時)
ターさんのキャリアをもって、何か裏話的なのあります?結構面白い糸を作ってるじゃないですか。

今こだわりの中であるのが、エコとかリサイクルとそっちだったりするところがあるんで、 その辺の難しさかな。時代の流れだから他の糸もエコにしようとしているけれども、レギュラー品の方が安定したものができると言われたりとかするんだ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

エコ素材の原料の供給自体は結構整っていた感じなんですか?

ただやはりエコにするにあたって、 綿だとかなんかはあればいいけども、それに使ってるもう片方のポリエステルがなかったり。ナイロンのリサイクルはあまりないから、変更が出来なかったり。ポリエステルでもカチオン加工したリサイクルポリエステルがなかったりとか、ちょっとそういう部分でどうしようかなと。

ターさん
ターさん

単純にエコ素材に置き換えることができる、普通のリサイクルポリエステルを使えばいいから。元糸はカチオン加工をされたポリエステルを使っていたんだよね。そうなった時に、染色が違ってきちゃう。カチオン加工だったら常温で染まるけど、レギュラーの普通のポリエステルは、高圧の染色機でなければ染まらないしね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

これはちょっと余談なんですけど。原料によって染料って違うんですが、プラス染色する色が入っていくときの適切な温度っていうのも素材によって違うんですよ。で、わかりやすいのがポリエステルで、ポリエステルって100℃だと染まらないんですね。130℃にしなきゃいけないんですけど。

岡崎彩月
岡崎彩月

130℃?!

佐野
佐野

はい。でも普通にお湯沸かすと100℃までしかいけないんです。だから圧力鍋とかと同じ要領で高圧力をかけて130℃まで温度を上げるんですね。

佐野
佐野

で、それが高圧っていうのがそれなんですよ。高圧釜っていう、それ用の染色釜があるんですけど、普通にポリエステルでやるとそれがレギュラーなんですよ。で、うちってポリエステル×ラミーとか、綿とかウールとかやってるじゃないですか。そうするとポリエステルの相手になる素材にも影響しちゃうので、ポリエステルも100℃で染まるように加工をしておかなきゃいけない。

佐野
佐野

カチオンポリエステルと呼ばれるものは、100℃で染まるように加工してますよっていうことなんですね。

岡崎彩月
岡崎彩月

加工するには何か入れるんですか?薬剤とか。

簡単に言ったら、薬剤をポリエステルに練り込んでおくとかすると、アクリルの染料でも染まる。今言ったように、染色の温度って、綿とか麻とか低温染色って大体80℃くらい。ウールとかアクリルは100℃。ポリエステルになると130℃とかになっちゃう。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

うちの素材で言うとあれですよね。エコに置き換えたいけど、そのための原料で欲しいものってすごくピンポイント。だから、その原料はそんなに都合よく出てこないよっていうことなのか。

今までレギュラーのものだったら、いくらでもあるはずじゃない。それが今度はリサイクルになった時に、まだそこまで追いついてない。バリエーションとしてどうするのか。今の段階ではまだそこまで幅広く、リサイクルのバリエーションというのもない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

それでうまくはまるものが見つけられたとして、それでもやっぱりさっきのお話で、レギュラーよりもクオリティが安定しないっていうのはどういうことなんですか。

今はレギュラーの方が綺麗に糸が引けて、オーガニックコットンの方がちょっとネップができそうなんですよね。だからちょっと試してみないと分からないんで、24kgだけ引かせてくださいって試紡するんだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

今のは綿の話ですね。 確かにオーガニックって重要な要素だと思うんですけど、人工的に、意図的に作っているもののほうが、均一性はやっぱりありますよね。野菜とかでも一緒ですもんね。無農薬で美味しいけど、形は別に良くなかったり、みたいなことですもんね。農薬を入れて管理したほうが、ある程度きれいに出来上がるってことですかね。

佐野
佐野

その点で難しいところがあったりとか、ポリエステルでも同じことを言えるんですか。リサイクルとレギュラーとで。

いや、単純にリサイクルであれば別に問題ないですね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

じゃあやっぱり天然繊維も、販売している素材を現状のものからエコ素材に置き換えようとなった時に、ポリエステルもリサイクルに変えていくようになるんですね。

レギュラーのものだったらずっと長く流していて安定しているけども、リサイクルの綿なんだけども、ちょっと違う綿に変わるわけじゃない。その時にどうなるのかなっていう。きれいに弾けるのかなっていう。紡績自体はやったことないから。ポリエステルはペットボトルをリサイクルしているけれど、本当にこの後リサイクル、そんなに出てくるのかなっていうのもあるんだよね。

ターさん
ターさん

レギュラーのポリエステルは安定して作っているけれど、リサイクルポリエステルはペットボトルをリサイクルしていくじゃない。この間テレビを見ていたら、ある大手飲料メーカーは100%リサイクルのボトルを使うって言っててたんだよね。そしたら飲料業界にリサイクルペットボトルを大量に使われたときに、じゃあ繊維の方にも回ってくるのかなみたいな。どの程度物量があるのかなって。

ターさん
ターさん

例えばペットボトルの中に少し飲みかけがあると、それはリサイクルできない。何でできないかっていうと、その残ってるものが何だかわかんないから。お茶のラベルが貼ってあっても、実際はお茶じゃなかったりしたら大変なことになっちゃう。そういうことがあるんで、飲み残しが入っているやつはリサイクルに回せないんだよね。

ターさん
ターさん

だから今その飲料メーカーは自分のところでそういう回収BOXを置いて、「そこに入れてください」みたいな形で回収はしてるんだけど、回収したものを飲み残しがあったら選択して破棄しなきゃいけない。絶対量としてどんだけあるのかなっていう。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

サイクル原料の供給が追いついていかないんじゃないかなって思いますね。

岡崎彩月
岡崎彩月

1回リサイクルしちゃうともう2、3度目はできないって聞いたんですけど。

いや、それをね、何回か繰り返せるように今一生懸命研究してると言っていました。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

へぇ、確かに進化スピードはすごいですよね。去年言ってたことと全然違うっていうのが結構あるので。
さっきの無農薬みたいな話から、 綿とかって何かできること限られている、そんなイメージだったんですけど、今“ギザオーガニック”とかも出てるんですよね。超長綿のブランド綿があるんですけど、要はそういう品質を育てること自体もオーガニックでできるようになってきてるんですね。

岡崎彩月
岡崎彩月

昔はできなかったんですか。

いや、あったんだよ。オーガニックギザってエジプト綿。あったんだけども、生産があまりにも大変だからやめちゃったの。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

まあ、でも大変でしょうね。めっちゃ管理すごそうですね。

超長綿を作ること自体が、 普通の綿より大変なの。長く生育させないと、 長い繊維ができないから。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

あ、そうか。 じゃあ、育ててる期間が…。

そう、長い。普通の綿よりも長い。途中で刈って…早めに刈っちゃえばさ、リスクが減るんだよね。その後に災害か何かがあった時に、その期間が短ければ短いほどリスクがないから。だから超長綿自体もあんまり作らない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

農場見に行ったことあります?

いや、ないよ。
日本で綿なんかを作ってるところって、趣味程度でちょこっとっていうのはあるんだろうけど、日本には綿農場が無いじゃない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。その綿花って、普通の綿と超長綿って、綿の状態だけでも見るからに違うのかなとか。

うん、やっぱり膨らんで、ハリがあって長いから違いが有るんじゃないかなあ?

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ちょっと玉がでかいですね。

普通綿ってピンポン玉ぐらいじゃない?繊維長が超長綿ってだいたい45ミリぐらいで、普通の綿は1インチだから、2.25ミリ長いから、玉も大きいのかなあ?

ターさん
ターさん
佐野
佐野

2倍ですね。

佐野
佐野

紡績工場さんの場合は、やっぱり仕入れ先が牧場さんになるんで、オーストラリア行ってますとか、結構聞くんですけど。 羊は毛を刈ってもまた生えてきますね。

そうですね。羊は毛を刈ってあげないと、夏は暑くて大変なので刈ってあげる。毛を刈らないとすごく長くなっちゃう。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

長くなるんですか?

そう、長くなる。テレビで前にやってたのは、逃げ回ってる羊がいて、6年間毛を刈ってなかったら、すごく長かったよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

アルパカもそうですよね。伸び続けちゃうんですよね。

人間の毛と一緒だよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そういう観点でいけば、動物にとってもいいことでもありますよね。
ずっと刈らなかったら、もっこもっこじゃないですか。こんな毛になって、刈ったら使えるんですか?硬くなってるんですか?

髪の毛も洗わなかったらベタベタになるでしょ。だから羊の毛も刈った後にそれを洗う。洗って、その油が出るじゃない?それを昔、化粧品にしていたんだよ。

ターさん
ターさん

昔「鐘淵紡績」はオーストラリアから羊の綿(ワタ)をそのまま買って、国内で洗いをしていたんだ。 そうすると、その油が出るじゃない。それを化粧品の方に回して、ハンドクリームを作っていたんだよ。そこから「鐘淵紡績」から化粧品の「カネボウ」が出来たんだ。墨田区の一番北にあったんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

繊維から始まっている会社が多いですよね。

今は、オーストラリアで全部洗ったワタが来て、日本に来るときにはトップの状態になっているんだね。
昔、30年くらい前にイタリアに行った時に、イタリアでもワタを洗っている工場は、もう既に2社くらいしかなかったよ。

ターさん
ターさん

そこの紡績工場を見に行った時には、廊下が油でツルンツルン。
羊のそのまんまのワタが置いてあって、そこから持って行くから、どうしても擦ったりなんかするからね。 廊下がもうピカピカするんですよ。ものすごいワックスが掛かっていて、ていう感じ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

こういうのは結構時間かかるもんなんですか?

もうザクザクザクザクザク。それこそ油を落とすだけじゃなくて、その辺に寝転がってるからさ、 草だとか藁だとかがついていて、一緒に洗い落とすんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

日本にも羊いっぱいいるじゃないですか。 牧場もたくさんありますし。ちょいちょい毛刈りして糸にできないかみたいな話って,それなりに上がってくるんですけど。毛刈りまではできるし紡績もできるんですけど、洗えないんですよ。その大事な中間工程ができなくて、 なかなか量産化しにくい。

小さい規模でやられてる人たちは、 自力で全部やっちゃう人たちもいるみたいだけどね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

この辺がずっと国産って難しいところですよね。

普通に洗濯機みたいので洗うわけじゃないからね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

言われてみれば「そうですよね」みたいなことが多いですよね。牧場に遊びに行って羊を触ると、やっぱりいろいろ付いてるし、ちょっとぬめっとしてますね。実はそんなにサラサラ、ふわふわじゃないですもんね。

それを洗わなきゃなって感じです。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

不思議なのが、繊維に使わせてもらっている毛は、よくこの動物の毛を使ってみようと思ったよな、とか思ったりします。

羊の場合は、人間が交配して、3000種類くらい、その中でメリノ種が特に良いんだね。
アルパカはペルーが一番多いから、その毛を単純に使ったのが初めだったんじゃないかな。

ターさん
ターさん

そこにいる動物の毛をうまく、いろんなものを多分使ったと思うんだけど、その中でどれだろうかって考えると、細くて柔らかくて、その方が使いやすいわけじゃない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

まあそうですよね。あったかそうですしね。

昔はみんな梳毛だったんだろうね。紡毛は使えない。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

どっちなんでしょうね。でもなんか紡毛の方が、紡績の原点ではあるじゃないですか。

でも、昔の毛は細い毛じゃないから。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

その獣毛を扱うってなった時、もうその紡績機器が充実してる時だったんですかね。

大昔は紡績機は無かったから、手で引っ張り出して、紡いだんじゃないかな。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

でも、それやるって言ったら、アルパカの毛なんてツルンツルンで全然絡まらないじゃないですか。どうやってやったんですかね。

やっぱり洗いをしないと。でも、あんまり洗っちゃうと、フィッシャーマンセーターじゃないけど、油があれば、それだけ雨とかって弾くじゃないですか。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですよね。

動物によって、当然、毛の特徴が全然違うんですけど、羊の毛は、なんとなく人間と似てるじゃないですかね。
カシミヤとかが、キューティクルがなくて細かくてツルツルで、毛の中で一番細かい。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

カシミアとセーブルの違いも、中に気泡があるかないかみたいなのも結構違ったりして。 純粋にその紡績のことを考えると、絡みにくい毛ほど引きにくいものはないですよね。

そうです。イタリアに行くチームにもそういうふうに、ビエラの紡績を見てきてもらうと面白いのかな。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

紡績もそうですけど、日本の撚糸って特徴的だよねって話が最近聞こえてきてて、あ、そうなんだって改めて思ったんですけど、逆に海外の撚糸も見てみたいですよね。

見たことないんだけども、向こうの人たちは、特にニットの世界っていうと、当時だと一番多かったのは12ゲージ、14ゲージ。じゃあ14ゲージに入る番手って何番?っていったときに、48番でいいよねって。それ以上細いの作ったってしょうがないわけだよね。

ターさん
ターさん

だからそういうものを向こうの人たちは作ってなかった。日本の撚糸工場が簡単に60番の撚糸なんかやってるっていうのを見て、向こうの人たちは驚いたって話を聞いたことがあります。自分たちはそんなに必要じゃないから細いものを作らない。日本の場合は細いもの、より細いものを作っていったんだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そうですね、クラフトマンシップってやつですかね。確かにそういう細くて綺麗なものを作るのは日本はすごい上手なんですよ。

今どうか分かんないけど、昔聞いた話だと、オリンピックに出場する選手のウエアはすべて日本の繊維なんです。競技に出るときに着用するくらい日本の繊維が繊細なんです。本当にコンマ何秒争う人たちだから、抵抗がないとかという部分では日本の繊維をつかっていたんだね。

ターさん
ターさん

ただ一般的に向こうの大手のスポーツメーカーが使う繊維は自国の物で販売してるじゃない。コンマ何秒で争う選手たち用のウェアは自国の繊維で作らない。オリンピック選手がそこのマークを付けて出場してるけど、本当はもう日本の繊維だったみたいだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そういう意味では確かに撚糸っていうのは結構しっくりきますね。必要がなかったっていう話も面白いですね。

ゲージに合わせた物作りにしてたからさ。

ターさん
ターさん

それでも会長がもう35年以上前かな、ヨーロッパから買い付けてきた16番単のモヘアタムがあったんだ。当時日本にはそんな細いモへアがなかったから、これ細くて柔らかくて、やはりいい糸だと思ったよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

当時は日本のモヘアって9番とかですか?

そう、9番とか12番。よく売ってたのが3.5番とか6番とかの3ゲージとか5ゲージ、7ゲージ用とかが多かったね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

じゃあ会長が買い付けてきたそれで12ゲージにかかるもモヘアタムが生まれたわけですね。

良かったね。
当時でも1万円したけどね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

当時で1万円ですか。

でも作った商品は130gくらいでできるんだ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

うん、でしょうね。軽そうですよね。

使ってもらったんだよね。一型1000枚だって聞いてさ。 え、高い糸で1000枚って思って、楽しみでさぁ。オーダー来たら1枚当たり130gだって・・・。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

まあでもお客さんとしてはそういうデザインっていうのがやっぱりいいわけですよね。当時その3番とか9番のモヘアタムっていくらだったんですか?3、4千円ですか?

もうちょっとしたな。
でもやっぱ体感的には16番で1万円って倍ぐらいのイメージかな。質もすごく良かったし。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

面白いですね。なんかやっぱそういう時の話を掘り下げれると、また新しい発見があるんだろうなと思います。

デザインが変わったからね。
昔はよりゴージャスに見せるためにさ、モヘアでもより毛が吹く太い番手のものの方が良かったんだね。ふくよかに見えたもんね。今スタイル変わってるじゃん。細身細身になってるから、そういうもの着ない。だからアンゴラにしたって、昔はもうどんだけアンゴラが吹くか、、毛を立たせるかっていうのが良かったんでね。

ターさん
ターさん

今はもうそういう風なデザインスタイルじゃないから、アンゴラっていうのは使わないかな。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

アンゴラが無くなってきてる理由が色々あるんでしょうけど、でもゴージャスとか繊細とか高級なところ、行き切ったとは言わないにしても、そこも充実してくると、やっぱ面白いのが今度逆なんですよ。僕も個人的に好きなんですけど、ベビーアルパカも良いし、アダルトアルパカも好きなんですよ。こっちのゾーンも、今後原料供給の問題も色々あると思うんですけど、今見ると結構面白いんですよね。

佐野
佐野

柔らかくて当然だと思う。原料はそうだけど、風合いもそういう意味では悪いかもしれないですけど、それにしか出せない雰囲気ってめちゃくちゃあるじゃないですか。そういうのってどうなるんだろうなと。なかなか購入ロットがでかいんですよね。

たまにお客さんと話していて、例えばモヘアタム。モヘアタムって柔らかい物があるじゃないですか。それと普通のレギュラーのモヘアタムがあった場合に、この使い分けが必要なんだ。柔らかい物っていうのは肌に優しいけども、形になりにくいんですよ、柔らくてトロトロするもんね。ところが、ちょっと張り感があって、ちょっと肌にチクチクする感じの糸の方がシルエットが出しやすいんだよね。

ターさん
ターさん

だからその辺は使い分けが必要です。何を作るかによってね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

編みの面白さはそこから生まれてきますね。どんな糸を使って、糸をどう組み合わせるか。

柔らかい糸で、固いガシッとした編みで、とか。それをコストバランスを考えながら作る。柔らかい糸でそれをやると、柔らかい糸は高い。ガシッとした編みは目付けが多くなるから、高いものになってしまうんですよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

高くなっちゃいますね。

いくらでもいいよって言えば、そうなるんじゃないですか。やはり、値段とのバランスがあるからね、考えないといけないね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そこがきついところでもあるんですけど、面白いところでもあるんですけど。
今日もいいお話が聞けました。ありがとうございました!

まとめ

  • 「紡績」は、綿(ワタ)から糸にする。「撚糸」は、出来上がった糸を加工する。
    • 紡績をしながら一緒に撚糸できる機械を「精紡交撚糸」、別名「トライスピン」という。
  • エコ素材への切り替えは一筋縄ではいかないことが多い。
    • 有機栽培だからこそ形状不良がでてしまったり、今後は化学繊維ではリサイクル原料の確保が難しくなってくるかもしれない。
  • 過去イタリアでは主流であった12G、14Gに合わせた糸づくりがメインだったため、48番手が多くそれ以上細い糸は作られなかった。
    • 一方で日本では高い撚糸技術により細い糸が作られるようになった。

結びに

日本の技術力の高さと努力により、今日のより細く、繊細な糸がどんどん生み出されていったんですね。トライスピンの機械は35年くらい前からあったようです!

エコ原料の背景も興味深いと感じられた方も多いのではないでしょうか。

次回もお楽しみに!