【教えて!ターさん】繊維長とマイクロン、糸の番手について
- 教えてターさん!

- 投稿日:
- 2025-06-26
- (更新日:2025-05-26)
6
今回の教えてターさん!は、前編に引き続き、糸・ニット初心者メンバーを交えてお届けいたします。
糸を学ぶなかで最初の方に勉強するであろう、糸の番手やマイクロン、繊維長について話を聞きました。丸安毛糸メンバーも学び始めたときはごっちゃになっていたようです。
※個人的な見解が含まれる場合がございます。あらかじめご了承ください。

今回のテーマは「繊維長とマイクロン、糸の番手」についてです。
この辺、僕最初めちゃくちゃごっちゃになってました。
番手って糸の太さと重さと長さの比率のことですよね。
番手はあくまで糸として完成した後の話ですから。
繊維長は糸になる前の繊維の話。毛の長さ


繊度っていう言葉があって、繊維の「繊」に、度目の「度」って書くんですが、それをマイクロンという言い方をするんですか?
それは太さのことだよ。


繊維の太さですよね。
そう。一本一本の繊維の太さのことだよ。


それって原料の話じゃないですか。
そこにやっぱり番手の話を一緒に学んじゃうので、ちょっとごっちゃになっている時はありました。
マイクロンとかって、どっちかというとやはり毛の方の話だね。で、合繊はみんなデニールになってくるからさ。

いきなり難しいこと言っちゃうんだけど、150デニールとかなんとかって、それを例えば75デニール、36フィラとかさ。

75デニールの糸を75本のフィラメントで作っているのが75デニール75フィラメントで、75デニール36フィラメントと言うと倍ぐらい太いじゃない。


75デニールというのは太さだとすると、その太さにするために使っている繊維の構成本数のフィラメントで75本の構成本数で結果的に75デニールになっているよというものと、36本の構成本数で結果75デニールになっている場合、どっちに使っている繊維の方が太いですか、ということですよね。

結果の太さは一緒だけど、そこに使っている質は75本束ねるか、36本で済んじゃうのか、みたいなのがマイクロヘッドライトですからね。
例えば、今うちでやっている「Proof PLUS α」は75デニールの75フィラメントで、「Proof PLUS stretch」の方は75デニールの36フィラメントだよね。


その差はどうなんですか?
75デニールで75フィラということは、1本の繊維の太さが1デニールじゃない。ところが75デニールで36フィラということは、倍だから1本の太さが2デニールになるわけよ。だからそっちの方が、厳密にいうと糸的には硬い。

要は繊維のフィラメントの太さが、太ければ太いほど硬くなる。強くなるんだよね。


最初の原則として、糸を作るときにどういう繊維を使うかみたいな話でいくと、細い繊維をたくさん束ねた方が、糸としてはしなやかというのは覚えておいてもいいかもしれないですね。
20マイクロンとか16.5マイクロンとか、一応聞きました?

マイクロンの話で言うと、18.5マイクロンのアルパカで“ロイヤルベビーアルパカ”を超える細い糸があって、どういう名付けをするか?という話は先輩との話ででました。

「アルパカの原料としてすごく細いものが手に入ったよ」ということだと思うんですけれど、48番の交撚糸を作る時に、レギュラーと呼ばれる繊維長が20.5マイクロンくらいの原料を使うのと、16.5マイクロンのもっと細い原料を使うのと、やっぱり細い繊維をたくさん束ねた48番の糸の方がしなやかになる。
原料も高いし、使う目付の量も多い。値段にも響いてくる。


マイクロンって数字が小さい方が細いんですね。ウールでいうと、細いものとして高級ゾーンの中でも割とみんな使っているのが16.5マイクロンとか17.5マイクロン。
それ以上もあるんですよ、15.5マイクロンとか。
それがとんでもない高級ゾーンになってくるんですけど、マイクロンだけ比べると、なんとなく羊よりアルパカとかモヘアの方が柔らかそうじゃないですか。
22.5マイクロンの「レギュラーウール」って呼ばれるウールよりもアルパカとかモヘアの方が実は太いんですよ。


レギュラーのモヘアって30マイクロンくらいでしたっけ?
30マイクロンくらいだよね。いいやつで24.5マイクロンくらいかな。


普通のウールより良いモヘアの方が全然太いんですよね。
またちょっと話が飛んじゃうけど、モヘアって糸だけで考えると決して温かい糸じゃない。
モヘアって獣毛の中で一番繊維長が長くて光沢がある。女性ものにはあんまり使わないけど、昔男性の夏用スーツには高級生地としてモヘアを使ってた。

そんなに保温性がないから、夏向けだったんだよね。だから、モヘアをあったかくするっていうのは、やはりタムタムヤーンやブークレーみたいにして、ふくらみを持たせるとか、そういうふうにするといいよね。
保温性を良くするんだけども、でも単純にストレートだと、わりかし通気性が良くて。だから、男性の夏物の生地に使われるんだよね。


モヘアって暖かいイメージありましたね。
獣毛の中で一番保温性ないのはモヘアだよ。だからタムタムにして、空気の層を作ってあげる。空気が逃げないようにって感じかな。


へぇー。
モヘア=タムみたいなのが、主流っちゃ主流ですしね。
ループにするのもわりかし大きなループしかできないんだよね。糸にハリがあるからね。細かいのはちょっと難しいかな。
その辺はやっぱりベビーアルパカの方がしなやかかな。カシミヤはやっぱり保温性はいいよね。細いし、やっぱり繊度が細いじゃない。

カシミヤは15.5マイクロンとかね。細いワタで糸を作るからそこに保温性が生まれるわけ。ところがさっき言ったモヘアなんかだと繊維が太いからどうしても熱が抜けていっちゃう。あまりにも通気性が良すぎちゃうだよね。

ただ、あんまり細い繊度のもので太い糸を作っても、今度はクタクタになりすぎちゃって。すごいダレダレになるんですね。ピリングも非常に悪くなってしまう。


絶妙なバランスの糸設計をしないといけないんですね。
16.5マイクロンの細いウールだけでそもそも作るとね、膨らみがない。あまりにも細いやつだけだと締まっちゃうから。そこにちょっと粗い原料を入れてあげるとそいつが少し起こしてくれて糸に膨らみが出て風合いも良くなるんだよ。


ああ、なるほど。

そうっすよね。そういう話になってくると紡毛の面白さが止まらなくなってくるじゃないですか。
紡毛の紡績工場さんと、「この配分だったらどうだ?」みたいな話してるのがすごい面白いんですよ。
バルーンの原理が一番似ているもんね。
だからアクリルのバルキー性をうまく使って、温度を上げた時にアクリルのバルキーが縮む。そうすると糸が膨らむっていう原理。


ふわふわですね。
そうそう。そうすると軽く上がるし。


軽くなるんですね!
太くて軽くなる。奥深いでしょ。


奥が深すぎます。
奥深いのと幅も広すぎて、どこから手を出していいかわからないですよね。

説明してもらえれば分かりますけどね。

体験して困って、聞いて理解するが、やっぱりなんだかんだ一番早いのかもしれないですね。
そうだよ。僕が一番覚えたのって、全部クレームだからね。
じゃあどういうふうにやってもらったらいいんだろう、で、クレームからいろいろ物を学んでいく。


覚える、そのきっかけがクレームなだけで、目的は多分人に伝えることだと思うんですよね。そのクレームをお客さんに説明しなきゃいけないじゃないですか。ただ、確固たる知識がないと伝えられない。そっちなんだろうなって思いますね。まだまだ、一生かけても多分覚えきれないですよね。すごいです。
本当に。いやー、この間から言ってるけど、長繊維の世界だったらまた別だしさ、全然わかんない。


丸安毛糸としては長繊維よりも、もうちょっと短繊維寄りって言ったら、それも語弊があるんですけど。
いやー、やはりどうしたって、ニットとかってさ、短繊維の方がやっぱり多いんじゃないですかね。


そっちで仕事してきたから、あんまり触れてこなかったのがありますよね。
だから、どうだろうな、ニットの中で、昔からある長繊維っていったらシルクぐらいなもんじゃないの。あと繊維長がちょっと長いのはあとは、麻のラミーとかね。
僕が知っているレベルだと、ことニットで前はあまりポリエステルは扱ってなかったんだよね。

ニットで本当に長繊維が出てきたっていうのは、どうだろうな。アクリルの長繊維が出てきてからかな、使われ始めたのは。
三菱レイヨンがやってた「シルバロン」、旭化成がやってた「ピューロン」っていうのがあったね。その前にレーヨンの長繊維があったね。

世界でアクリルの長繊維って、各国でチャレンジしたんだけども、最終的にモノになったのはこの2社だけだった。前回話した毛混のアクリル短繊維とは全然違う次元の話ですよね。


アクリル長繊維?
なんでアクリル長繊維に挑戦しようと思ったんですかね。
やはりより長い方が強いからじゃないかなと思う。光沢もあって綺麗だったし、良かったんだけどね。ちょっとあまりにも“アクリル離れ”っていうのがあったりして、やはり長繊維の量って絶対量が少ないわけよ。


でも、長繊維と短繊維、どれが何に入るのかもわからないんですよね。
そもそもでいくと長さの違いだって、じゃあどこからなの?とかって話になるし。
分かりきっているのは、動物の毛は全部短繊維ですよね。綿なんかもそうだし。どうだろう、紡毛に入っているナイロンなんかも、はじめは長繊維なんだけど、途中でカットするんだよね。
短繊維を作っているんだよね。いろいろ違うからね。


綿もあれですよね。短繊維っていう括りの中の話ですけど、「超長綿」っていうものが存在しますよね。
綿の中では長いよね。普通綿って、大体レギュラーのものって1インチ。繊維長が2.5㎝くらい。

超長綿はその倍近く、4.5㎝ぐらいあるかな。中長綿とかていうのもあるよね。


超長綿って言うから、長繊維なのかと思いました。

思っちゃいましたね。短繊維の中で長いよってことですね。短髪かロングヘアかみたいなことですよね。やろうと思えば永遠なんですよ。
そうだろうね。例えばシルクの場合、着物なんかのシルクは、一本の長さが18m。それがこのシルクの柄になっているんですね。柄が出てくる。だからそれを切らずに使うっている。

絹なんか光沢があって強いっていうのは、「正絹」っていうものになるんだけども、着物用のシルクだね。だからそのくらいの長さがあるんだよ。


以前「正絹だからこの糸は強くて」って言われたんだけど、正絹じゃないものもあるんですか?
一番短いのは、「ローシルク」。
蚕さんが作る絹をお湯のなかでぐるぐるぐるぐる解いていって、一番いいやつは正絹という。最後蚕さんが出ていったあとの繭からできたものをローシルクって言う。


ローシルクって独特の匂いするじゃないですか、編んだ後も。
ちょっと脂っぽさがあったりとかね。
すごいな、今日は色んなところに話が飛んでるね。


そうですね。色々と聞けて良かったんじゃないでしょうか。
今日のところはここまで!次回もお楽しみに。
まとめ
- 「繊度」は原料段階の繊維1本1本の太さで、毛に対しては「マイクロン」という。
- マイクロンの数字が小さければ小さいほど、細くなる。
- 合繊に対してはデニール/フィラメントの表記となる。デニールを構成する繊維の本数をフィラで表示する。
- (例)75デニール36フィラの場合・・・75デニールの太さの糸を作るための繊維の構成本数が36本ということ
- 繊維のフィラメントの太さが、太ければ太いほど硬く、強い糸になる。
- マイクロンで比較すると、ウールよりもアルパカやモヘアの方が太い
- レギュラーウールは22.5マイクロン、高級ゾーンのウールは16.5、さらに細いと15.5も存在!
- レギュラーモヘアは30マイクロン、高級ゾーンのモヘアで24.5マイクロン
- ニットの中でいうと、昔からある長繊維は「シルク」。
- 綿や麻、ラミーは種別としては短繊維だが、「超長綿」など繊維長が長いものも存在する
- 獣毛は短繊維に分類される
結び
いかがでしたでしょうか?基礎的な内容ですが、初心者にとっては混乱しがちな内容ですよね。
ぜひ、皆様の理解の一助になっていれば幸いです。