【教えて!ターさん】やっぱり奥が深い「染色」について

  • 教えてターさん!

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今回の「教えて!ターさん」は、日本のファッション業界ではあまり馴染みのない“難燃性”のテーマからスタートします。

また、「教えて!ターさん」でも何度も話題に上る、“染色”の奥深さについても詳しくお話を聞きました。

※個人的な見解が含まれる場合がございま。あらかじめご了承ください。

佐野
佐野

久しぶりの「教えてターさん」収録です。今日もよろしくお願いします。
今日から今年入社してくれた、中国出身の劉さんもジョインしてもらっています。

よろしくお願いいたします。

劉
岡崎彩月
岡崎彩月

今日は業務で気になったことを色々溜めてたんで、聞いていっちゃってもいいでしょうか?

佐野
佐野

どうぞ!

岡崎彩月
岡崎彩月

アメリカ向けへの輸出業務をやってて、あるブランドさんから「難燃性」の問題解決をお願いされたことが最近ありました。

綿100%の糸だったんですが、染めてもらっている染工場さんに相談したところ、リン系の薬剤しかないと。ただリン系だとそのアメリカのブランド独自の規制物質基準に引っかかってしまい、、、なかなか難しいなと思いました。

佐野
佐野

難燃性の問題って、国内ではあまり言われないですよね。

難燃性というと、カーテンなどは着火すると急速に拡大してしまうので防火性能を有する防火対象物品を使用するよう消防法で義務付けられていますね。例えばマンションだったら、1~5階まではこの等級、6~10階まではこの等級っていうふうにね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

へえ~!

火は下の方から上に燃え広がるから、下の階のほうは燃えにくくてなっています、っていうのは聞いたことがあるかなあ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

ヨーロッパだと難燃性の問題ってどうなんですかね。

岡崎彩月
岡崎彩月

ヨーロッパのブランドさんには言われたことはないですね。アメリカ、カナダの北米のブランドが全体的に厳しいですよね。

アメリカのほうが全体的に厳しいかもしれないね。いろんなことに対して。“ファッション”じゃないんだと思います。

ヨーロッパはファッションとしてある程度良ければいい、みたいな感じかもしれないね。アメリカはとにかく訴訟が怖いので。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

確かに。

例えば、動物保護の問題なんかあったときに「この原料の動物はどういう飼育環境だったんですか」とかね。
面白いよ。かたや、ヨーロッパは全然問題ないよ。アメリカは「訴訟の国」だから国民性の問題なんじゃないかなあ。

ターさん
ターさん
廣江
廣江

自社ブランドをやってるときも、アメリカでは「これは「どういう原料でできていて、飼育状況はどうなんですか?」ということもすごく聞かれましたね。

そういう面でいくと、アメリカの方がそういう柔軟性はないんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

国民性が絡んでくるというのは興味深いですね。

岡崎彩月
岡崎彩月

あとは、糸染をした時の染め上がりで、なぜ濃色と淡色で重さが結構変わっちゃうのか?ということが気になりました。
同じ糸でも黒と白で50-100gくらい違ったので、驚いたんですよね。

濃色はどうしても染料が多く付着するから重くなるんだよね。だから同じものでも、黒と白とでいったらやっぱり黒が重くなってしまう。
一番顕著に出るのはシルク。シルクだとセリシン(カイコが絹の生産の際に作るタンパク質。絹糸を染色する際の「精練」という工程で剥がされる)を落とす。例えば10Kgの生地糸でセリシンを落とすと、8.5Kgぐらいしかなくなるかな。ところが黒を染めると、9.5Kgくらいまで戻っちゃうんだよね。そのぐらい違うんだ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

え、じゃあ番手が変わるってことですか?

僕が1番初めにもらったクレームがシルクの乱寸だったね。「こういうクレームもらったんだ」ってニッターさんに話したら「そんなの当たり前だよ」って。
本来は工場がすべて色によって度目調整しなきゃいけないんだよね。そのぐらいシルク100%は顕著にでるんだよね。

ターさん
ターさん

さっきも話したけど、生地糸が10Kgでセリシンを落としたらば8.5Kgぐらいしかないと思うんですよね。
ところが販売は投入ベースだから、アイボリーであっても10Kg、黒であっても10Kg。だけど、厳密に言うとアイボリーの方が痩せてるんだよね。

ターさん
ターさん

ずいぶん昔、40年ぐらい前の話だけども、当時のアパレルさんはアイボリーだけ番手を太くして合わせてやっていたね。
その頃はね、ある程度の量もあったし、アイボリー用だけ番手を太くしてたんだよね。淡色、中間色、濃色って分ければ一番いいんだけど、そこまでやってたんです。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

アイボリーだけ別番手ですか。

綿だって、染色するときに綿かすがあるから一回晒す。で、白だったらそれでおしまいじゃん。黒は別にさらす必要ないから、元糸も痩せないんだよね。それに染料いれるから、重くなるよね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

綿100%の素材で、淡いピンクと濃いピンクで染めてもらったんですけど1本100gくらい違って「えっ!」てなって。結構びっくりしました。

うち、色々な素材をやってるじゃない。いろいろな糸を図ってみるんだけど、1番油断できないのはリネン。生地糸が10Kgだとして、さらした白は8Kgになるんだけど、なんと雨の日に計ると10Kgあるんだよね。そのくらい湿気を吸ってしまうんだよね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

リネンってそんなに湿気を吸うんですね!びっくりです。
綿の素材でも、生地糸は1本1Kgだったんですけど、染め上がり直後に「いつもは0.95Kgなのに今回0.9Kgになっちゃったよ」と言われて急いで確認したことがあります。でも同じ素材で次違う色を染めたら染め上がり0.95KGだったんですよね。

どうしても染色が終わって乾燥が終わった直後って過乾燥になっているから余計軽いんだよね。

ターさん
ターさん

生乾きだと、カビ生えたりっていう心配があるから、目いっぱい乾かしちゃう。そのあと、本来はしばらく外気に触れさせておくと、そこに自然に湿気が入っていく。そうすると風合いも良くなるんだよね。糸も膨らむしね。

ターさん
ターさん

だから染色で言ったら、チーズ染色とカセ染色でやった時にカセの方が圧倒的に戻りやすいんだよね。
巻かないでカセの状態で置いておくんだよ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほど、染め上がりの重さって、染料だけじゃなくて乾燥とのかかわりもあるんですね。

サンプル作るタイミングって、湿気の時期なんだけど、現物作る時には冬なんだよね。寒い冬に乾燥しきってるのに、そこに暖房なんか入れると余計に乾燥するよね。そうなったらリネン(麻)なんかすごく編むのが難しい。
リネンってもとは草、枯草と一緒だよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

はいはい。

生木ってグニャって曲がるけど、折れないじゃない。枯れ木って簡単に割れちゃうじゃない。だから、要はリネンだとループ作った時に引っ張られて、うまく編めない。鋭角になった時に湿気があれば曲がるけど、そうじゃなければ鋭角になって、折れちゃうんだよね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

あ~なるほど。

もうそれは悔しいからね。
サンプルでは何の問題もなかったのに、半年立ったら真冬に糸が切れて使えないって。悔しいから、1回試してみようと思って、机の下にずっと置いてみたりしてね(笑)

ターさん
ターさん
佐野
佐野

悔しさのあまり自分で試してみるっていう(笑)

岡崎彩月
岡崎彩月

染色関係に戻ると、前に地下水と工業用水の違いが染色に差を生む、ということを社内でちらっと聞いたことがあって、気になりました。

地下水とか井戸水、工業用水って全部きれいなんだけども、そこの土地によって土壌がアルカリ質か酸性質かってあるから、染色する工場さんの場所によって水の質って違っちゃうんだよね。だから自分のところにあった水を考えながら染料を考えるんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

飲み水も軟水とか硬水とかってありますもんね。

紫陽花だってその土壌によって咲く花の色が違うじゃない。だから水質によって変わってきちゃうんだよね。
あとは温度だよね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

工業用水っていうと、普通の水とは違うんですか?

工業用水は要は水道水だよ。水道水は中性じゃないですか。
中性だったらそれはそれで合わせればいいから問題はないけどさ。そういう科学的なことはわからないけど、水に合った染料使いをしなきゃいけない。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

水道水か地下水かって、土地によるんですか?

いや、この染色工場は地下水だ、工業用水だとかって感じできまっているかな。
とある工場が、もともと別の場所にあった時は地下水でやってたけど、引っ越しして工業団地に入って水が変わったんだよね。そしたら染色の色が合わなくなっちゃった、今までのレシピじゃだめだからまた一から色を取り直してってこともあったりね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

新潟とか、長野の染工所さんに行って手を洗わせてもらうとめっちゃ気持ちいですもんね。夏でも「冷たい!」ってなりますもんね。べたつかないし。

その土地で汲み上げる水だからさ、水質変えるってことそれは難しいもんね。逆に水質が変わっちゃったら大変な問題になっちゃうからね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

そうですね。当然海外になるともっと違いそうですね。

佐野
佐野

中国だと水質は硬水なんですかね。

そうです。中国の水は本当に硬いです。

劉

日本って水の豊富な国じゃない。だから、昔から日本の水質はいいっていうよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

もし日本のレシピで海外で染色しようとするとなかなかうまくいかせるのは大変かもしれないですね

岡崎彩月
岡崎彩月

あとは、バルクで染めオーダーいただいたときに、サンプルで出していた色のロットとブラさないでほしいという依頼が多いんですけど、同じ色でも微妙にブレちゃうことがあるので、難しいなと思っていました。

染色のたびに色ブレっていうのは困るけど、色の組み合わせでどうしても難しい色とかっていうのがあるからね。
よく言う「演色性の高い色」、演じる色って書くけど色が本当に演技しているみたいに蛍光灯の下で見ている色と自然光の下で見る色が変わっちゃったりするものがあるんだよね。

ターさん
ターさん

前にスーツを買った時にさ、お店の中で買った時にはちょっとグリーンぽい色だと思って買って着たら、外にでたら茶色になっちゃったってことがあったな。
紺だと思ったら外出ると紫になっちゃったりね。「え、こんな色だっけ?こんな色は買わないよ!」って表出てびっくりみたいなさ。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

やっぱり二者混、三者混(混率が2種類、3種類の素材のこと)になると、余計難しくなってくるわけですよね。

それはそうだよね。二者混、三者混になってくると、それぞれの素材の光沢が違ったりとかさ。
発色性が違うから、染まる条件が違うんです。

ターさん
ターさん

染める順番は温度が高い方から先に染めるんだよね。
綿ポリエステルの素材だったら、ポリエステルを染めてから綿を染める。綿は80度、ポリエステルは130度で染まるから、130度まで上げると、綿の色が出てきちゃんだよね。
このように1度に染まらない場合は、2回、3回と染める。これは二浴染め、三浴染めという。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

じゃあ例えば、一浴の素材で2週間で染まるよと言われたら、二浴、三浴の素材だったら2週間じゃ染まらないですよね。

それだけ厳しいっていう話だよね。
例えばウール100%ってさ、一浴で染めるじゃない。二浴のもの、例えばウールアクリル染めるっていった時に、アクリルを染めて1回置くかって言ったらそんなことしないから、続けてそのまま染めるからただ時間がかかるんだよね。

ターさん
ターさん

綿ウールの場合は、ウールは100度で染まるから先に染める。それで、ウール100%だけだったらうまくやれば1日3回は染まる。ところが綿って染めるのに1日かかるんだよね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

えーそんなにかかるんですね!

そうすると先にウールを染めて、その後、綿を染める。1日半かかっちゃってるよね。
冬物を染めている時期と夏物を染めている時期って、工場の回転率が違ってきちゃう。
さっき言ったように、ウールは1日3色染まるけど、綿は1日1色しか染まらないから、じゃあ30色来たって言ったときに、単純計算で1か月はかかるよね。ウールは10日で終わるのに。

ターさん
ターさん

綿は80℃くらいの低温で長く煮込まないと色が定着しないんですよ。アクリルは徐々に温度を上げていって30分~1時間くらい煮込めばそれでもう定着する。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

そんなに差があるのは面白いですよね。

余談だけど、人間の髪の毛って金髪にしたり銀髪にしたりできるじゃん。ところが、ウールは金髪になったり銀髪にならないよね。
黄色くなったりグレーになったりするけどね。

ターさん
ターさん

確かに、なんでですか?

劉

死んでる毛か、生きてる毛か。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

えー!!

昔言われたことあったんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

人間もウールみたいに抜けた毛だけを集めて染めたら金にならないんですかね…

いや、わからないけど(笑)面白いよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

高圧釜の話って前しましたっけ?チーズの高圧釜。
ポリエステルを染める時も染料が入っていく温度は130度なんですよ。でも、普通のお湯って沸騰させても100度が限界だから圧力釜みたいに130度まで上げれる特別な釜が必要なんですよね。

ポリエステルはその条件が必要になってきちゃうから、ポリエステルと何かを掛け合わせるって、実は結構そこの配慮が必要だったりするんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

カチオンって聞いたことありますか?カチオン化加工をすることで、100℃以下でも染められるようになるんですよ。

高圧釜ってさ、もう初めから圧力が入るようになってるから、ある程度どこでやっても大丈夫なんだけども、標高の高い場所だとそうもいかないんだよね。土地の標高によって、沸点が違ってくるからね。

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

高温で一気に染めると、糸が痛みやすかったりするんでしょうか。

やっぱり温度が高いのでね。染色に限らずさ、調理だって低温調理とかってやったりするじゃん。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

染色って条件をそろえるのが大変なんですね。

A工場の職人さんが、Bの工場行って、同じものが染められるかっているとなかなかうまくいかないのは、水が違っちゃうから。その水に慣れるまでが大変なんだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

なるほどな。染色って何回かこの企画で取り上げてますけど、奥が深いですね。
せっかくなので、今回初参加の劉さん、何か聞いてみたいことありますか?

2つあります。まず1つは、新人のうちに意識して身につけておいた方が良いことをお伺いしたいです。

劉

できるだけ早く、実際に工場を見に行った方が早いかもしれないですね。百聞は一見にしかずじゃないけど、それが一番いいと思います。こうやって会話だけで聞いてみるのもいいけど、実際自分の目で見て感じる。それが一番大事だと思うよ。
紡績屋さん、撚糸屋さんもそうだし、染工場さんも、ニッターさんもだね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

見てみないと自分の考えも持てないですしね。

そうそう。想像だけではわからないんだよね。話を聞いて現場を見たときに、「あ、あの人が言ってたのはこういうことなんだ」って落とし込めるだよね。

ターさん
ターさん
佐野
佐野

やっぱり行き続けないと分からないですよね。1回目で「ああ、そうなんだ」って気づいて。逆に2回目3回目って行くと、今度は自分で気がつく部分がありますよね。僕も新潟に何十回も行ってますけど、いまだに発見がありますもん。

ありがとうございます。あともう一つは、お仕事を長く続けていく中で、大切にされてきたことはなんでしょうか。

劉

好きになることじゃないかな。ここで言っちゃいけないことかもしれないけど、家でカミさんに「もうそろそろ辞めたいな」なんて言うと、「でも仕事好きなんでしょ」って、何も言えないよね(笑)

ターさん
ターさん
岡崎彩月
岡崎彩月

(一同)いい話~!

佐野
佐野

好きになって興味を持って振り抜く。それがターさんが今も色々新しいことを吸収されている秘訣なんでしょうね。

佐野
佐野

最後は深イイお話になりました!今日はここまで。また次回の「教えて!ターさん」もお楽しみに。

まとめ

  • 国内ではあまり聞かない「難燃性」の問題も、お国柄によって重要事項になりうる
  • 生地糸では同じ重さでも、染め上がり後は濃色と淡色1本の重さに差が生まれることがある
  • 染工場さんの土地柄により、染色に使用する水質がことなり、その差が染色に影響する
  • 糸を構成する素材が2種類の時は「二者混」、3種類のときは「三者混」という
  • 染める順番は染まる温度が高い素材から先に染めていく
    • 例えば綿ポリエステルの場合、ポリエステルを染めてから綿を染める。綿は80度、ポリエステルは130度で染まるため。このように1度に染まらない場合は、2回、3回と染めるので、「二浴染め」、「三浴染め」という。
  • 100℃以上でしか染まらない素材は、「カチオン化加工」をすることで、100℃以下でそめられるようになる。

結びに

今回の教えてターさんはいかがでしたでしょうか?染色に関しては何度も取り上げてますが本当に奥が深いですね。

また次回の「教えて!ターさん」もお楽しみに!!