【教えて!ターさん】特別編 学生さんのニット・糸にまつわる疑問にお答えしました

  • 教えてターさん!

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今回の教えてターさん!は、丸安毛糸にインターンにきてくださった学生さんを交えた特別編をお届けいたします。

過去、専門学校で講師の経験もあるターさん。学生さんが日々学校でニットについて学ぶ中での疑問や、インターンをしてみて気になったこと、そしてターさんの若かりし日の経験談など、さまざまな内容をお話しました。

※個人的な見解が含まれる場合がございま。あらかじめご了承ください。

佐野
佐野

今回の「教えて!ターさん」は、スペシャルゲストお迎えしております。
企業研修で丸安毛糸に来てもらっている、学生の木村さんと佐藤さんです。お二人はニットを専門に現在学んでいらっしゃいます。

(木村さん・佐藤さん)よろしくお願いいたします!

インターン学生
インターン学生
佐野
佐野

お二人には「教えて!ターさん」のバックナンバーを読んできていただいたんですが、読んでみてどんな印象でしたか?

(木村さん)私たちくらいの知識量でも、わかることが書いてありました。難しい単語とかもあったんですけど、わかりやすいと思いました。

インターン学生
インターン学生

(佐藤さん) 一つ一つ染色のことだったり、糸の素材だったり、わかりやすく細かく書いてあるので、学校では学ばないことが深掘りされていて、勉強になりました。

インターン学生
インターン学生
佐野
佐野

ありがとうございます。日頃のニットの勉強されてると思いますが、せっかくなのでその中でちょっと分かんないようなこととか、あとは仮にこの業界で働くとして、こういうこと勉強しておきたいなとか、そういうことがあればターさんに色々お答えいただこうかなという感じです。

ターさん
ターさん

昔服飾学校に行って、講師をした時を思い出すなあ(笑)

佐野
佐野

実は僕が学生の頃、丸安毛糸から田崎さんが講師として教えに来てくださることがあったんですね。もうそれも16年も前ですか!

(木村さん)16年前と今とでは求められる糸は変わってきていたりしていますか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

別に変わってるってことはないかな。ただね、ファッションだからその時の流れでこういうものが流行ってるっていうのはあるけれども。
去年から展開しているビーズ糸のカペラとかスパンコール糸のラディアンとか、そういうのも定期的に何回か流行っているしね。
一番初めにビーズの糸をやったのは40年くらい前だったかな。

佐野
佐野

40年前の話が平気で出てきましたね(笑)
これがこの企画の肝なんですよ。

ターさん
ターさん

ビーズは40年くらい前に作られていたんだ。その当時は手作業だから、機械の前と後ろに人がいてビーズを通して糸を作っていくような作り方だった。今の作り方は逆に見てないからわかんないけどね。

佐野
佐野

当時で値段はいくらですか?

ターさん
ターさん

多色ビーズの糸で1KGあたり43,000円だったかな。

佐野
佐野

高い!

ターさん
ターさん

だって作るのに人件費もかかったしね。ハイブランドにはそれでも買ってもらえてたからね。高いのはビーズの質も良いものを使用したしね。安いやつでその当時は13000円くらいだったかな。

佐野
佐野

80年代の話ですね。

ターさん
ターさん

そういう形からすると、何年か周期で出てくる物があったり、昔あった原料が今はないっていうのがあったりとかかな。
日本の場合は最近新しい物ってあんまり出てきてなくて、逆に減っていっちゃってるかな。 開発っていう意味ではそんなにないかなあ。今までの素材に機能性を持たせて保温性、速乾性、吸水性を良くしたりしているけどね。

ターさん
ターさん

テープ素材が出てきたのも40年くらい前かな。

佐野
佐野

それは何テープだったんですか?

ターさん
ターさん

レーヨンのスピンテープだね。昔本に紐のしおりがついたでしょ。
あれをそのまんま繊維に持ってきたんだよ。その作り方をスピンテープと言うんだよね。

佐野
佐野

それって糸を組んでるんですか?折ってるんですか?

ターさん
ターさん

折ってるんですよ。当時は農家の人が暇な時期に小さい機械で編んでたみたいだね。だからあんまり量は上がってこなかった。

ターさん
ターさん

長く編んでもらって、それをニット糸にしてあげる。それがテープヤーンの始まりかな。

佐野
佐野

しおりってどれくらい前からあるんですかね?ターさんの子供の時からありますか?

ターさん
ターさん

あったね、歴史は古いんだろうね。組紐みたいな形のやつだったんだろうけど。それがあってラッセルテープみたいなのも、いまだにあるからね。

(佐藤さん)学校の修了制作で、とある糸を使っているんですけど、二本取りで太い棒針で編んでて、どんどん斜行していっちゃって。結局ガーターも入れてたんで、ガーターで編んで打ち消して何とか使ったんですけど、それ以外に斜行する時の対処法ってありますか。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

斜行するっていうのは、要は糸のバランスが取れてないから斜行するんだよね。それが天竺の時に起きるので、両版組織だと起こらない。両方で引っ張られるからね。
斜行糸の対策法って言ったら、撚りが強すぎるのか弱すぎるのか、それによって僕たちは撚糸屋さんに撚りを少し足してくださいとか、マイナスしてくださいとかっていう依頼をするんですよ。

ターさん
ターさん

ただ編む前に、Uの字に引っ張って垂らすと、下がくるくるくるくるって回ってきちゃったら斜行しちゃうというのがわかる。双糸になろうとしてるじゃない、もうその時点で。

(佐藤さん)そもそも斜行するような糸は作らないってことですか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

もともとは単子の糸って片撚りしか入ってないから斜行する。それを斜行しないように双糸にする。綿の場合の30番単糸だと、例えば750~800回ぐらいのS撚りを入れてバランスをとっているよね。元糸って初めは全部Z撚りだから、逆に下撚りから今度は上撚りっていう形になるんだけど、 上撚りを双糸にするのは大体3分の2ぐらいかな。

佐野
佐野

今のお話、ちょっと口挟んじゃいますけども、糸に対して1mあたりに何回撚りを入れているかってことなんですよね。

ターさん
ターさん

単純にいくと1mで何回とかっていうふうにするんだけども、厳密に言うと細かいところは1インチに何回とかなんだよね。

佐野
佐野

もしかしたら佐藤さんが使っている糸は太いもので、スナッグとか多いかもしれないですね。初めから単糸で出来上がっているものも多いかもしれないですね。

Z撚りとS撚りで撚り合わせることって、今ありますか。

廣江
廣江
ターさん
ターさん

あります。うちの糸だとキュリアスです。
S撚りにもZ撚りも強撚なので普通の双糸よりもボコボコしている。

ターさん
ターさん

太いウール100%のロービングなんかっていうと、3番手とかで、そういうのはあるけども、元々の撚り数が少ないから、ある程度保てちゃう。糸が太ければ、構成本数が多くて繊維が絡むから、糸が抜けないんだよね。
ところが、細いやつは構成本数が少ないから、撚り数が少ないと抜けちゃう。だから、強度を持たせるために、細ければ撚り数を多くしなきゃいけないんだね。

佐野
佐野

撚り数が多ければ、余計斜行しやすいですね。

ターさん
ターさん

斜行が出るときは、細い糸を巻くとか、1本補ってあげる。例えば、ウールでも綿でも、反対からナイロンの細い糸でカバーしてあげればバランスが取れるから、それで斜行を失うように作るとか。

(佐藤さん)反対からってことですか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

Z撚りに対してS撚りでっていう感じだね。

佐野
佐野

条件が揃わなくても2本あればそいつをどうにかするってことはできますよね。使いたい糸太い糸であったとしても、もう1本細い糸を2本目として用意してあげれば、寄り合わせてどうにでもすることができるっていう考え方ですよね。
編みで斜行を止めるとなったら、編み組織で考えていくしかないかなとは思いますね。

佐野
佐野

僕からもちょっと2人に質問いいですか?
家庭機のお話で全然大丈夫なんですけど、1年間学校でやってみて、編みやすかったりとか、編みにくかったりとか、それぞれ何かあれば教えてもらえますか?

(佐藤さん)家庭機だと、モヘアは編みにくいなと思いました。細かい毛が引っかかっちゃって、絡まってるな、みたいな。
あとは昨日編んだジュピターも、多分度目が良くなかったかもしれないんですけど、結構グッグッと詰まっちゃう感じがしました。

インターン学生
インターン学生

(木村さん)私もモヘアですね。編んでても結構針に引っかかるのと、あとやっぱり毛足が長いから、その分編み機の横のブラシっぽいところにたまっていくので、編んでてもそこがうまく回らなくなります。モヘア系だったり、毛足が長いファンシーヤーンはすごくやりづらいです。 編んでても結局また止まって、そこの毛を取っての繰り返しなので、スムーズに効率よく編めないですね。あとゲージギリギリの太さとかもすごい編みづらいです。

インターン学生
インターン学生
佐野
佐野

そうでしょうね。どちらも結構起きる話ですね。

ターさん
ターさん

そう、起きるよね。どうしてもモヘアなんかは毛があるから編みにくいのと、ジュピターって提灯モールだよね。
提灯の部分が太くなっているから、そこが引っかかっちゃう。だからブークレーなんかでもループになっているから、針が刺さっちゃったりとか、どうしてもそういう部分が、ストレートのものに比べると、編みにくいというのはあるかな。

(木村さん)モールも編みづらかったですね。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

太いモール糸が多分編みにくいだろうね。

佐野
佐野

家庭機で編める細番手のモール糸というのも存在していて、編みにくいですよね。

ターさん
ターさん

逆毛を立たせながら編むからで、その方が毛立ちが良くなるからね。

(木村さん)逆さですか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

要は、モール糸を作る時に方向があって、逆に編んでいかないと毛が立たない。引っかかるように編んでいかないといけない。だから余計編みにくいんだよね。

ターさん
ターさん

簡単に言ったら、絨毯の毛を起こしたときと寝かしたとき、色が変わるじゃない。
方向が逆になることで色が変わってくるんだよね。

佐野
佐野

ターさんのこれまでの経験は1時間じゃない足りないですね。50年かかりますね!

佐野
佐野

木村さんは何か質問ありますか?

(木村さん)はい。アパレル全体でもSDGsと言われることが増えてきてると思います。インターン期間中ブックを見る機会が多くて、丸安毛糸でもリサイクル素材を使ってるものも多いと思うんですけど、どういうふうに再生をしてるのかと気になりました。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

リサイクル素材って圧倒的にポリエステルが多いですね。今はレーヨンとかあるけど、一番初めはポリエステル。ペットボトルが1番の公害だったので、これを再生するっていうところから始まったんだよね。
綺麗に洗浄して、溶かして、チップにして、それをまた海外に持っていって、洗浄して、また日本に送ってくるという形なんだけど。

ターさん
ターさん

じゃあ、今そういう風にやってるけども、みんな再生っていうわけにはいかないよね。当然、もともとのペットボトルがなきゃ再生できないわけだから。この間テレビを見てたら飲料メーカーさんが、自社の飲料の回収ボックスを置いて回収して、全て再生ペットボトルにします、って言ってたんだよね。

ターさん
ターさん

そうすると、もともとのペットボトルが飲料側に行ってしまえば、繊維の方に回ってくる量ってかなり少なくなるんだろうなっていうのはある。それよりやはり石油から作るバージンのポリエステルの方が簡単だし、正直言って薬品を使わない、エネルギーを使わないという部分ではそっちの方がエコなんだよね。再生するっていう方が、いろいろエネルギー、薬品、水などもコストも高いので、どうなんだろう。

ターさん
ターさん

ペットボトルが環境汚染の一つになっているのでは事実なのでそれをなくすにはいいのだけどね。

佐野
佐野

オーガニックの綿とかオーガニックの麻ってどういうイメージですか?

(木村さん)農薬が使われていなくて、肌に優しいような。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

それを野菜に置き換えた場合、例えばキャベツ作るときに、「オーガニックのキャベツです。農薬も何も使ってません」って言うとどういうキャベツですか?

(木村さん)虫食いですか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

そう、虫食ったりとか、そのまま自然な形になるよね。綿も麻もそういう風になる。そうすると、見た目は綺麗じゃない。やはり、手をかけるっていうか、野菜に対して肥料をやって、虫の駆除だとかなんとかすると、綺麗な野菜ができるじゃない。自然のままだと虫食ったりとか、葉の形も綺麗じゃないんだよね。開いちゃったりとか。

ターさん
ターさん

本当にそれが自然なんだけど、ただ綺麗じゃない。綿も麻もそうなってしまうので、出来上がった糸にやはりちょっとカスみたいなのが入ってる。だから、今まで作ってたレギュラーのものよりも、糸を作るのには大変なんだよ。糸を引いた時に、綺麗なこなれた糸が出来上がらないとかね。

ターさん
ターさん

だから、どっちがいいのかなって。農薬をまけば地球の中に入っていっちゃうわけだから、良くないっていうのはわかるんだけども。
みんながきれいなものを求めているときに、Tシャツの中に黒い点々があったりとかって嫌じゃない。
そういう部分でどう皆さん考えてくれてるかなって。「それでもいいよ、そっちの方が自然でしょ」って言うんだったらいいけど、ちょっと黒いものがあったら、これ傷、不良品って弾かれちゃう。今の日本だとまず弾かれちゃうよね。そういうところがちゃんとわかってもらえないと難しいなっていうのがあるね。

(木村さん)昨日、部門ミーティングに参加して、イタリアで開催されるPitti Fillatiではエコ認証が必要かはブランドによりけりっていうお話があったんですけど、日本国内ではエコ認証が必要なブランドってどのくらいあるんでしょうか。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

はっきり言うとね、日本はその辺は遅れてる。だからポリエステルのリサイクルっていうと、バージンのポリエステルよりも値段が300円くらい高くなる。その時に日本人は、だったら安い方でいいっていうところが多いかな。わりかし海外の人たちの方が,300円高くてもリサイクルにしてくれるっていうことがあるね。

(木村さん)消費者も考え方を変えていかないと難しいですね。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

そうだね。でも本当は消費者に回らないようにするのが一番いい。だから海外の今やってるところは、国とアパレルさんがある程度話して、そういうものを使わないって決めてるんだよね。使わなければ消費者に回っていかないじゃないですか。消費者はそこまでわかる。消費者の方が、じゃあこれが今までのバージンのポリエステルです、これがリサイクルのポリエステルですと言っても、そんなに響かないよね。

ターさん
ターさん

それが一番ひどいのは日本かなと思う。使うところが安いほうがいいみたいな、この辺は国民的なこともあるし、企業も高いものを使えば、どうしても高い商品になっちゃう。消費者にやっぱり高いものを売りつけることになるので、その辺をどう考えていくかなっていうのもあるよね。難しい問題だよね。

佐野
佐野

やはり今の学生さんたちはそういうところに関心があるんですね。

ターさん
ターさん

そういう風に考え方を変えて、もう自然なものだからこういうのがあってもしょうがないっていう形に捉えてくれればいいんだけど、お店でキャベツ買うのに虫がついてたら、今の段階だったら買わないと思うんだよね。販売するときに虫がついている事はないけれどね。特にアパレルもキレイさが重視される業界なんで、そういうの難しい。

佐野
佐野

天然となると面白いですけどね、そういう個体差って。“味”みたいに購入する方が多い。

(佐藤さん)コンテストに出るにあたって、初めての糸を扱うことになって、昨日ブック見ていいなと思った糸が、綿とカシミヤとシルクの混紡だったんですよ。それで学校の先生から「編む前にカシミヤにはロウをいっぱい付けないといけないんだよ」と。

インターン学生
インターン学生

(佐藤さん)「編み終わったらそれを落とさなきゃいけない。だけどシルクを水に濡らしたくないってなったら、これを個人で製作に使うのは難しいんじゃないか」って言われたんですけど、そういうのはやっぱり加工処理をしないといけなくて、自力で処理するのが難しいんではないかと思ってて、何か良い方法が有ったりするんでしょうか。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

そのシルクがどういうシルクなのかっていうのもあるんだけども。蚕さんが吐き出す時に、セルシンっていうニカワみたいなものがついているんだけど、それを剥がしてあげないと染色ができないんだよね。たぶん糸になってるんだから、もうその時点で白くなってるはずなんだ。生地のまま使うってことはできないから、練り上げ、染色するんだ。 その時にある程度の柔軟剤だとか入れるから、それを使っても問題ないんじゃないかなって気はするけどね。丁寧に扱えば洗いにかけちゃっても大丈夫だよ。

佐野
佐野

その糸はトップ染めなのかな。メランジカラーだった?

(佐藤さん)そうです!

インターン学生
インターン学生
佐野
佐野

いいものってトップだったりとかしますからね。

ターさん
ターさん

(写真を見て)これはトップですね。そうするとね、洗わなきゃいけない。それって紡績あがりの状態で、糸を作る時って油が必要なんだよ。だから製品を作ってから普通に洗いを入れればいい。それこそバケツに洗剤を入れて、ちょっと手押しでやってあげればいいんだよ。

(佐藤さん)そんなにビビることはなかったんですね。

インターン学生
インターン学生

(木村さん)綿って洗い入れることでどういう風な風合いになりますか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

その綿にもよるんですけど、やはり洗うときって必ず柔軟剤を入れるじゃない。だから柔らかくなる。
例えばレーヨンは柔軟剤入れないとガッチガチになる。麻も柔軟剤入れないとだめだね。

ターさん
ターさん

また余談になるけどさ。昔は染工場さんもこの辺(両国近辺)にもいっぱいあったから、モヘアの染色上がりだったりを毎日持ってきてくれてたのよ。その時に、触ってみて風合い悪かったりすると「これ風合い悪いよ」って言うと、じゃあもう一回持って帰って柔軟する、その時の柔軟剤は何を使う?

ターさん
ターさん

正解は「リンス」。

(木村さん)ああ!いけそうですね。

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

要は工業用の柔軟剤よりも人間が使うリンスの方が成分が数倍良いんだよ。だからどんなに安いリンスでもそれで仕上げたら柔軟剤よりも風合いが良くなる。

佐野
佐野

リンスも高いですよ(笑)

ターさん
ターさん

高いけどさ、そんなにいっぱい使うわけじゃないし。今のリンスなんてそれこそもっといいのがいっぱい出てるじゃん。キューティクル埋めちゃうでしょ。だからサラッサラになるんじゃないかな。

ターさん
ターさん

このセーター硬いなと思ったらそういうもので柔軟したら柔らかくなるよ、同じ毛だからね。

(木村さん)自分のセーターをやる時に気を付けることはありますか?

インターン学生
インターン学生
ターさん
ターさん

二層式がおすすめですね。あんまりガラガラ回しちゃうと縮んじゃうからね。

佐野
佐野

せっかくの機会なので、今思いついたことを伺っていいですか?田崎さんはなんでこの会社に入ったんですか?

ターさん
ターさん

45年前ってあんまり就職先がなかったんだよね。パッて求人雑誌を見てるときに、両国の丸安毛糸って書いてあって、「あ、近い」って。

佐野
佐野

繊維の会社っていうのは、なんとなく馴染み深かったんですか?

ターさん
ターさん

ないことはないけど、家は繊維じゃなかったからね。ただ、場所柄、曳舟とか押上界隈って、結構ニット屋さん多かったんです。小学生の時に友達の家に行ったら、二つ機械がボンと置いてあって「なんだろうこの機械?」って思ってたんだけど、ずっとわからずにいたんだよね。この会社に入って手横の機械を見て「あの子の家にあったのこれだ」って思ったよね。

佐野
佐野

手横は会社にはもうなくなっちゃっいましたね。
当時は「莫大小(メリヤスヤ)」て呼んでたんですか?

ターさん
ターさん

横編み、要はニッターさんのことを「莫大小(メリヤスヤ)」と呼んでいた。だから会社名も、古いところは「●●莫大小」と書いて●●メリヤスって呼んでた。

佐野
佐野

そっか、繊維じゃないけど、糸っていうより、編むっていう。

ターさん
ターさん

その当時だから、自動機も当然あったけども、手横っていうのもまだあったんだよね。ちっちゃい家なんかだと、手横があれば、上のゲージを積み換えるだけで、そんなスペースいらなくて、ゲージを換えることができるんだよね。

佐野
佐野

田崎さんが今になって思う、学生たちがもしこういう業界に入るなら、学業の中で学んでおくべきポイントってどういうところになると思いますか。どういう基礎知識を今、興味を持っておくべきかとか。

ターさん
ターさん

自分が最終的に進みたい方向なんだろうけども、そのときにどっちの方向に行くか。パターンなのか、それともデザインなのか、じゃなくて、ものを作る方なのか。そっちで考えていったときってかなり難しいけど、もう単純でいいんじゃないかな?洋服が好き、編み物が好きとか、その中からニットが好きとか。まずは洋服からだよね。

佐野
佐野

渋いっすね。ちょっと僕が難しく考えすぎたかもしれないけど、そういうことなのかもしれない。

ターさん
ターさん

いろんなブランドのものだとか、傾向もそうだろうし、糸のことも。一番いいのは、着て風合いを確かめるっていうことかな。お金がかかるけど、試着がありますからね。
それこそ、また余談になっちゃうけどさ、会社入って、若い頃だったのでカシミヤのセーターなんて着れないわけだよ。なのにお客さんに「カシミヤのセーター、柔らかくて、軽くて、あったかくていいですよ」って言ってたね。「着たことないよ」なんて思いながらね。

佐野
佐野

確かに、それやるべきことですよね。

ターさん
ターさん

でも情報なり周りから色々教わってさ、「旅行行くときだってね、軽くて小さくなって広げると、パッて空気が入れば膨らんで、あったかくていいよね」って話を聞いて勧めるわけだよ。そういうものを自分なりに着たりとかさ、触ったりとか早い時期にすればいいのかなと思うよ。

やっぱり体験することって大切だとおもいますね。私がレディースのオリジナルブランドをやってたときに、男の人がバイヤーで来たとしても、羽織ってみたりはしていましたね。羽織ったときに、暖かかった、軽かったっていう感覚はわかるから、そういう体験をお客さんに説明した方がいいって言ってました。そうすると共感してもらえる。説得力が違いますね。

廣江
廣江
佐野
佐野

そうですよね。ターさん長年お仕事されて、今の質問に対してこのアドバイスは、結構効きますね。いろんなことに情報を持ちなさいっていう。

ターさん
ターさん

この繊維の世界に入るのであれば、やっぱりそこが一番だと思いますね。

佐野
佐野

結構色々質問が出てきて、たくさんお話してきましたね。

ターさん
ターさん

服飾学校に講師に行ってた時も、毎日生徒さんがいろんな質問を考えてきてくれて、それに答えていたね。人目の勉強にもなったね。

佐野
佐野

直に教えてもらえる1時間って、結構貴重ですからね。
ニットを学んでいるお二人からしたら不思議かもしれないんですけど、ターさんは編み物に特化せずに、“糸”のお仕事をされてきた人なんですよ。2人は編み物ができる前提で、この編むという技術をどこで活かしていこうかなが次のステップの考え方だと思うんですけど、ターさんに限らずうちの会社の人って、糸も勉強していなくてこの仕事をしているという人たちがたくさんいて、編めるか編めないかがさほど重要じゃない。
でもその糸を売る相手の人たちは編んでいる人たち、という仕事のバランスが、ニット科で学んだ僕が入った時、ちょっと戸惑いがありましたね。

ターさん
ターさん

全然知らないで、この会社に入って、少し編みを覚えろって言われて動かしたりもしたけどね。

佐野
佐野

編み物が実は意外と共通言語じゃなかったですよね。

ターさん
ターさん

それこそ男の人で編み物をする人って昔からいたんだよ。
漁師さんは、網を編んだりなんかするじゃない。遠洋漁業行った時とかっていうと、自分でセーターを編んだりしていたんだよ。

佐野
佐野

編み物の起源として、一説では言われてますね。

(木村さん)授業でも習いました。漁師さんの家それぞれに柄があって、もし船上で亡くなっても、柄で識別できるっていう。

インターン学生
インターン学生
佐野
佐野

糸に油が含まれると浮いてきますしね。

ターさん
ターさん

あとは洗わないんだよね。洗っちゃうと、油が抜けちゃうから。
糸を作るとき、トップ染めなんていうと、すごく油使うから、糸にも油が結構入ってるんだよね。

ターさん
ターさん

うちが紡織さんから糸を買って、ケースの中にそのまんま入ってると、段ボールがもう油でベタってなってるんだよ。だから、1キロの糸が、洗いだけをかけただけでも、30~50グラムとか油の分で減っちゃうだよ。(獣毛の混率によっても違いがある。)それくらい油が入っているんだよね。

ターさん
ターさん

たださっき話にあったトップの糸の場合だと、紡績からそのままか、1回洗いを入れてるのかはちょっとわかんないけど。だいたいトップの場合だと洗い入れてないんだけど、手芸糸屋さんで売ってるトップの糸はみんな洗ってると思う。じゃないと、糸を留めている紙がずーっと置いといたら油だらけになっちゃうからね。

佐野
佐野

工程ごとの洗いと油の関係っていうのもすごく大事ですよね。知ってるか知ってないかで、製品だった時のトラブルとか全然違うんですよ。

ターさん
ターさん

それをよくわからずに勤めてたら、もうこういう事象に対してはこういう処理をしてあったなんて、正直、全然考えたことなかったね。

佐野
佐野

そうですね。風合い出しだけじゃなくて、工程ごとに洗う理由がちゃんとあるんですね。

佐野
佐野

ということで、今日は特別編として学生のお二人といろいろなジャンルの話をしてきました。皆さんありがとうございました!

終わりに

皆さん、今回の教えて!ターさんはいかがでしたでしょうか?

糸業界で約半世紀にわたって経験されてきたターさんからのアドバイスに、学生のお二人が熱心に耳を傾ける姿がとても印象的でした。

ぜひ、次回もお楽しみに!